第陸章/蒼茫の傷痕、澱む流砂


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 闘いの決着は、あっけなくついていた。

 脆弱な呼吸を繰り返すたび、肉の焼ける悪臭が肺を焦がす。

 敗者は二人。

 這いつくばった死にかけと、首を傾げた死にぞこない。

 勝者は宙に立って、一人を見下ろし、一人を絞首していた。

「ふふ、あんなに必死になって……。つくづく可愛い子供たちですね。………ふふっ、ふふふ、ははははははははははは────」

 訶利帝母は白いのどをのけ反らせ、般若のようにけたたましく笑った。観音菩薩の微笑はどこにもなかった。

 二人が命を賭した死闘も、この鬼女にとっては加減した遊戯に過ぎなかったようだ。

「か……な……」

 京平に腕はない、脚もない。燃え滓となった臓腑がかろうじて生命を維持している状態だ。



 ───哀の一太刀は、鬼女に届かなかった。



 断たれたのは京平の左腕。捕らえていたはずの訶利帝母がぐにゃりと歪曲し、そのとき初めて幽界に逃げられたのだと気付いた。

 凍りつく時間。消失した腕の痛みさえまだ脳に伝わってこない。血の尾を曳いて飛んでいく鋼の腕と、自分のやったことに目を見開いている哀だけが視界に収まっている。

 すべてがスローモーションの世界で、ふたたび訶利帝母が現れたのは、瞠目している哀の真後ろ。闇を脱ぎ去るかのように鬼女はそこに立っていた。

 嫣然と微笑みを浮かべ、たおやかな指を伸ばす鬼女。開いた指の一本一本が鋭い鎌と化して、哀の首を切り裂いた。

 湿った音と共に首環(チョーカー)が宙を舞い、遅れて血飛沫が夜空に散る。

 哀の双眸が光を失い、力なく崩れ落ちていく。その向こうで、鬼女が爪についた返り血を舐め取り、狂虐に酔いしれた緋瞳を向けてくる。

 言語にならない絶叫を上げて京平が伸ばした右腕は、劫火に焼き尽くされた。血液が一瞬で沸騰し、両脚が内圧で爆ぜ飛んだ。



 ───そして。



 哀は鬼女の手の中で、静かに死を迎えようとしている。

「か……な……」

 京平はもぞもぞと身じろぎした。その姿はまるで、地を這うことすら出来ない無様な芋虫。

「何故にあなたはこの女を想うのでしょう。この女ほど罪を重ねた人間はいないというのに……」

 侮蔑に等しい憐れみを浮かべ、訶利帝母は哀を見やった。

 哀は壊れた人形のように脱力し、濁った瞳で濁った空を見上げている。

「もはや私が手を下さなくとも、この鬼遣は死ぬでしょう。そして阿防羅刹鬼様もあと数刻をもって現世に誕生する。あなたの大事な妹のまたぐらから」

 京平は止まりかけた心臓が動き出すのを感じた。

 だがそこまでだった。脈が速くなった分、むき出しの血管から勢いよく体液が逃げていく。

「ふふ……」

 訶利帝母は嘲笑し、はたと座興を思いついた。

 この罪深い少女を信じて疑わない少年の心を確実に堕とす遊びだ。

「何も残っていない貴方。誰も助けられない貴方。命ついえる前にひとつ耳を傾けなさい。私のいとまを心地よくすごすため。この女への黄泉苞苴のため」

 そうして鬼女は暴いてしまった。妖艶にせせら笑いながら、爬羅剔抉とした語りぐさで。

 哀が京平から隠そうとしていた、羅刹鬼と鬼遣、そして憑坐の呪われた因業を。




       †   †   †




 羅刹鬼は最古の鬼神。決して人とは“相容れぬ者”。

 その“相容れぬ者”と戦うために造り出された者が“鬼遣”。

 では“憑坐”は?

 その役割は何なのか。

 最も神聖な巫女の血を継承しながら、最も穢れた魔を産す娼巫。そんな者がどうして在るのか。

「答えは簡潔にして明瞭。“憑坐”───つまりあなたの妹は人の子として生まれたわけではない。時代の骸共により造られた人形なのです。この“鬼遣”と同じように」

 哀は動かない。喉につまった血さえ吐き出そうとしない。ふたたび裂けた古痕だけがよく目立つ。

「私にさえ勝てないこの魯鈍な鬼遣が、一人で羅刹鬼様を封印できると思いましょうや?」

 答えは否だ。彼女にあるのは殺戮の力。死なない鬼神を殺すなど平仄が合わない。

 だが現に海神の氏(うじ)を持つ鬼遣たちは再三にわたり最古の鬼神を封印してきている。

 ならば彼らはどのようにして羅刹鬼を封印したのか。

 ただ封じ込めるだけでは羅刹鬼の無限とも言える力を消すことはできない。殺戮では足りぬ封印を補う必要があったのは自明の理。

 その要を担うために造られたのが“憑坐”だった。

 “鬼遣”に続く二人目の人造の娘。彼女こそが鬼神封印の鍵を握っていた。

「無から生まれた娘たちによって、阿傍羅刹鬼様は今日まで封印されてきました。我々の侵攻をことごとく退け、完璧と言っていいほどの封印を施行してきたのです」

 だが、その封印はまさしく外道の法だった。

 長期の封印では年月と共にほころびが生じ、鬼神がいつ甦えるか予測できない。

 なにより時代から必要とされなくなった鬼遣たちに、大規模な封印を何度も施せる力は残っていなかった。

 よって彼らは、“死なない鬼神”を“死ぬ鬼神”に変えることにした。

 そのためにはどうするか。簡単なことだ。精神のみの存在を殺すには肉体を与えてやればいい。

 そのために憑坐は造られた。潔浄なる子宮にあらゆる魔を降ろすことができる、生まれながらの封印者。

 おぞましき化物にその操を捧げ、臓腑を捧げ、魂魄を捧げ、死を捧げる。

 人の母より肉の身を与えられた羅刹鬼は、人界への絶対的な干渉力を持つ一方、同時に“死”に支配される“生物”に成り果てる。

 生きとし生けるものである限り、人に殺せぬ道理はない。定期的に羅刹鬼は憑坐に降ろされ、そのつど殺されては蓄えた力を拡散させられた。

 処刑は羅刹鬼が生まれ落ちる前に完了させねばならない。自らの意志とは関係なく生贄にされた少女は、子宮に宿った胎児ごと串刺しにされ、腸を引きずり出され、脳の一欠片まで細断された。

 肉は火で炙られ、骨は酸で融かされ、残った灰は地中深くに埋められた。

 泣こうが、喚こうが、命を乞おうが、処刑者に慈悲はなく、さながら家畜のそれのように、少女は屠殺された。

 何度も何度も、転生するたび、降臨するたび、殺された。確実に殺された。

 そして千年間、その屠殺を続けた者こそが───。




       †   †   †




「もうお分かりですね?」

 訶利帝母は微笑んだ。亀裂のような微笑みだった。

「あなたの大事な妹を殺すのは、私ではなく、羅刹鬼様でもなく、あなたが愛してやまないこの女なのです」

 罪を暴露された哀は、茫洋と断罪の刻を待っている。

「あなたはこの女と共に戦いながら、何も知らないでいたのですね……。それでも愛しき人を信じ続けて……。なんと憐れで、なんと健気で、なんと愚かな益荒男子でしょう」

 げらげらと笑い、訶利帝母はうわべの憐憫で京平を見やる。

「どうです、心当たりはありませんか? この女に羅刹鬼様の封印方法をたずねたとき、はぐらかされるようなことはありませんでしたか?」

 心当たりは───残念ながら有った。

 『あなたが知る必要はない……』。『これ以上詳しい説明をしても京平には分からないだろうから……』。

 憑坐の話に触れるたび、哀はそう言った。

「ですが、それも詮無きこと。よもやあなたが助けようとしている者を殺そうと狙っているなどとは言えるはずがないですものね。ですから私が教えて差し上げましょう。あなたは裏切られていたのですよ。この女を愛したその瞬間から」

 哀の目尻から、涙のように血がこぼれた。

「“鬼遣”は生まれついての殺戮者。殺すことが存在の全てであり、殺すことが唯一の価値。この者は生きている限り“憑坐”を殺そうとするでしょう。おのれの矮小な存在価値を守るため、卑屈に、あざとく!!」

 生ぬるい黒南風に乗って、鬼女の話は終わった。

 その間、京平の双眸はつねに哀に向けられていた。その瞳に込められた感情はそう多くはない。

 不信。嚇怒。憎悪。おそらくそういったものだ。

 お前はずっと嘘をついていたのか? 妹を助ける気など初めからなかったんだろう。俺を利用するために近づいたのか、まんまとだまされたよ。悪いと思うなら死んでくれよ。死ね。さっさと死ね。そうすれば俺の妹は助かる。

 無言の瞳は何も言わない。だが、哀には京平の眼がそう責めているように思えた。

 訶利帝母が京平に最後の選択をせまる。

「貴方は真実を知りました。さあ、この死に損ないを如何します?」

 京平は選択した。すべてを知り、そして選んだ。



 彼は───彼女を見つめていた。答えは変わらない。何も、最初から変わりなどしない。



「ギリッ……」

 訶利帝母は軋むほどに鼻筋にしわを寄せた。そのまま、弧月の笑みを浮かべる。

「………愚かな男。愚かな女の死を見届けなさい」

 細い首に鬼の握力が加わる。衰弱しきった哀がひきつった声であえいだ。

 のどをしめ上げる手に力がこめられていく。鬼女がその気になれば、身から首を分かつなど容易いことだろう。

 けれども、その動きはあくまで優雅で淑やかで───なぶり殺しにするつもりだ。

「……………ぇ……っ…………」

 哀の口から膿血が滴った。意識とは別に唇が酸素を求めて震え、京平の名を紡ごうとしている。

「か、な……」

 京平は哀の名をもう一度呼んだ。そして無力な自分を呪った。

 ───何故この手は届かない。何故この足は動かない。

 くたばっている暇はないんだ。彼女を助けるにはもう今しかないのに。

 哀は真実を告げられず、脅え、逃げ、そして楓呼を殺すつもりでいた。それは事実かも知れない。彼女は裏切ったのかも知れない。

 けど、そんなことはどうでもいい。どうだっていい。

 あいつは必死につぐなってきた。誰にも止めようがなかったことを、たったひとりで背負ってきたんだ。

 悩まなくてもいいことに悩んで、誰かを救うには誰かを諦めなきゃならないのに、誰のことも見捨てられないから、結局は自分の命を捨てて。あいつはそうやって償ってきた。

 俺は知ってる。あいつがどれだけ苦しんできたのか。今どんなに苦しんでいるのか。そしてこれからも苦しんでゆくことを。

 誰にも赦されないまま、誰にも愛されないまま、ずっと独りで。

 だけど、俺は知ってやれた。あいつの罪も苦痛も悲しみも、すべて知ってやることができた。

 だから願う。

 あいつの心に触れたときから、癒しようのない負の感情を抱きしめたときから。ずっと願い続けてる。



 ───力が、欲しい。



 それはただ純粋な願いだった。



 応えるのは静寂と無。

                         消えゆく意識。

     砂塵。
                血。
                             風。


 そして、解放。



 心臓が───いや、大地が脈打った。心臓の律動に合わせて、大地が低く鳴動する。

 爛れた京平の皮膚が劣化した。ひび割れた肌から黒い液体が染み出てくる。

 それは血液ではなく、液体ですらなく───それは、力の具現。

「ゴ……ア……ア……ア……!」

 全身の痛覚に膨大な負荷がかかる。引き裂かれ、押しつぶされ、溶かされ、灼かれ、ありとあらゆる痛痒が京平の身を襲う。

「ガフっ……グ…………ギ……!」

 内臓が蠕動を起こし、筋肉が内側から張り裂ける。

 ギシギシという奇妙な摩擦音は、膨張した顎筋が奥歯を摩耗させていく音だった。

「ギ……ギギ……!」

 脳の中まで力は侵蝕してくる。精神が汚染される。記憶が粉砕される。

 死ぬ方が万倍ましな煉獄を味わい、それでも京平の願いは変わらなかった。



 ───たくさんのものを奪われた。



 操られた人々。その中には学校の友達もいた。
                              きっと何人も死んでいる。


 杏。俺を慕ってくれていた、気弱で、けれど何事にもめげない後輩。
                                          目の前で殺された。


 楓呼。大事な妹。
            鬼共の王に捕らわれ、犯されようとしている。


 そして、哀。悲しい運命にとらわれた少女。
                           彼女の命が、消えていく。


 友達を、家族を、奪うのか。愛する人まで、奪うのか。

 させない。そんなことは絶対に承知できない。

 これは決意じゃない。誓いじゃない。

 恨みはない。憎んでなどいない。

 戦うことなく済めばこの上ない。静かに去ってほしいと願ってる。

 ───だけど、お前たちを許すことはできない。俺と同じ咎人たち。彼女と同じ罪人たち。

 もうたくさんだ。この血の匂いも、腐った風も、悪夢みたいなこの世界も。

 だから───、

「俺は、あんたを殺す」

 短くつぶやいたその呪詛は、羽化の音に掻き消された。

 爛壊した京平の肌がぴしぴしと罅割れていく。

 その下に見えるのはむき出しの肉、ではなく強烈な光芒。

 さらに現れるは空五倍子色(うつぶしいろ)の大鎧。

 額の角は雄々しく突き立ち、鬣(たてがみ)を伸ばした双角の兜となる。

 無くなっていた四肢は、肩までを守る篭手を着け、より逞しく生え変わった。

 大地の鳴動がやんだ。幾許かの静寂のあと、白い呼気。

 夜を奏でる燦光と月琴のしらべ。銀灰の鱗を散らしながら、彼は悠然と立ち上がった。

 真に覚醒した彼に、人のなごりは残存しなかった。そしてその姿は───鬼ですらなかった。

 人々は彼のことを知らない。鬼共も彼のことを知らない。だが彼を知る者が言った。

 あれは最古の鬼神がひとり“羅侯阿修羅王(らごあしゅらおう)”の再誕だと。

「燃えて滅せよ!」

 とは、訶利帝母の呪だった。生誕の儀をけがす劫火の砲弾がいくつものクレーターを穿つ。

 鬼女は覆い尽くすような殺意におののき、鋼の鬼神に遮二無二(しゃにむに)攻撃を仕掛ける。

 校舎がまたたく間に火の海となって熔けていく。だが京平の周囲に妖の炎は届かない。

「消えろ」

 その言葉だけで炎海は鎮静された。

「───有り得ない……!」

 訶利帝母はひきつった声で京平を否定した。

「有り得ない……! そんなはずはない……! 羅刹鬼様が、貴様などに……───いや、この妖気は、ちがう……? 貴様、いったい───」

 その先は光の槍に切断された。

 それは正真正銘、光の槍。

 柄を大地に根差し、先へ行くほど五百重(いおえ)に枝分かれする不定形な刃は大樹を思わせる。

 もしくは膨大な量の金属を目的なしに鍛鉄すればこんな形状になるのかもしれない。もっとも、それを見ることは落雷を目で追うのと同等の行為だが。

 障壁など間に合わない。幽界の門を開く暇などない。光が見えたのなら、それは己が射抜かれた瞬間なのだから。

「………?」

 訶利帝母は片手に捕らえていた鬼遣が居なくなったことに気づいた。首をつかんでいる感覚はある。なのに鬼遣は落ちていく───自分の腕と一緒に。

「えぇ……あ……?」

 訶利帝母は肩から裂けた鋭利な傷口を見下ろし、真下に落ちた自分の腕と鬼遣を凝視した。その顔様は当惑にゆがみ、悲鳴を上げることすらままならない。

 哀は淡く光る球体に包まれ、墜落死の難を逃れる。彼女の首をつかんでいた鬼女の手は、球状の結界の中で灰のように崩れた。

「……………」

 京平は緘黙して構えた。腰を落として拳を握り込む。それだけで大気が悲鳴を上げた。

「ひ、ぃぃぃっ……!」

 恐れをなした訶利帝母は幽界へと逃げ出した。転けつまろびつするその姿はあの肥満の鬼を彷彿とさせた。

「開け」

 刹那のうちに空間が凝縮され、京平の眼前に彩度のない竅があく。

 追いかけるように鋼の鬼神は幽界へと消えた。

 静寂が五秒。

 不意の爆発音と共に門が開き、白い煙を尾にして訶利帝母が墜落してきた。

「ギ、ギュァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァっ!!」

 鬼女は鶏声のような絶叫をあげて地面に這いつくばり、焼けただれた自分の姿にひたすらわめく。

 両腕を無くした鬼女は美しい女性などではなく、しわがれた老婆の姿をしていた。

 裂けた肩口からは蜘蛛のような節足が何本も生え、かつて角があった場所には卑猥な触手が絡み合っている。

「………それが正体かよ」

 やや遅れて京平も着地した。重々しい衝撃と共にはがれた銀装が地面にいびつを刻む。

 鎧兜がくずれ落ちて、京平は血を吐いて倒れた。

「き───貴様ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」

 怨嗟の怒号。化けの皮をはがされた訶利帝母は、唾液をまき散らしながら奇声を上げる。

 直径数メートルの巨大な火球が数千個、シャボン玉のように宙に出現した。

 放射熱で地面がちりちりと焦げ始める。運悪く火球に触れてしまった校庭の木が一刹那で骸炭の柱となり、熔融した地面に呑み込まれていった。

「死ィィィィィィィィィィ、ねェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!!!」

 全妖力を用いた、あとのことはまったく考えていない最狂の奥義。

 直撃すればこの学校はおろか、高台すべてが熔岩の湖に変えられるであろうその奥義が放たれることはなかった。

 トッ───という水滴が岩を打つような硬い音がした。

「……………こっ……ごぶっ……?」

 我が身に起きた事態を把握できぬまま訶利帝母は咳きこんだ。そのたび黒い血が着物を汚す。

 痛みの元を見下ろして、鬼女は目を見開いた。緋い刃金が自らの左胸から生えている。

 背から肺と心臓を穿って胸へ抜けた神剣は、真っ赤な蒸気を噴出させて、訶利帝母の生命力をみるみる奪い去っていく。

「ギャアアッアッアアァァァァァァァァァァァァァァァァァッァァッァアアアアアっ?!」

 神剣が刺さったままの胸を節足で掻きむしり、訶利帝母は無茶苦茶に飛行しだした。

「死ぬのは……貴様だ……」

 哀は刀を投げつけた姿勢から、脱力してくずおれる。

 だが、くずおれながらも、しっかりと意識を神剣に集中させ、哀は呪を詠った。

 蜷局を巻く暗雲がいななき、蒼白の明滅。その数瞬あと、神鳴が街に響き渡った。







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