第陸章/蒼茫の傷痕、澱む流砂
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京平へ
黙って出て行くこと、どうか許して欲しい。
京平の言葉。自分の気持ち。
色々考えたけれど、あなたは人の世で生きるべきだと思いました。
そして私は、あなたと生きることはで きません。
私にその資格はない。
だからせめて、あなたが起きたときには全てが終わっていると信じて、この文をしたためることにします。
京平に読む気がなければ、このまま破り捨ててください。意義あるこ
とはなにも記していません。
でも、できることなら最後まで読んでほしい。
私が書いた最初で最後の恋文だから。